AIが人間から奪えないもの。果てしない人間の好奇心。

孫正義さんのソフトバンク2018基調講演の記事を読みました。
世界をリードする会社がAIが人間の能力をあらゆる分野で超える日が来る前提で動き始めています。ある説では将来的にAIが小説を書くようにすらなると言います。人間の仕事が奪われるという話もよく耳にします。
私はどれだけAIが発達しても人間の活動を奪うことはできないと強く確信しています。なぜそう感じるのか見ていきましょう。
趣味やスポーツの本来の目的
学問、ゲームなど人間は様々な知的活動をします。なぜ人間は知的な活動をするのでしょうか。本当に好きならやれ!役に立つかどうか、他人の評価は関係ない!でも書いた通り、純粋に好奇心を満たすためではないでしょうか。
人間の好奇心には限りがありません。きれいなフォントがあるのに習字の美しさに感動するし、車があるのにスプリントを競います。AIには人間が自ら活動する喜びを奪うことはできません。実際、既に人間の能力を超える技術が登場しても変わらない関心を集めている分野があります。
AIが将棋や囲碁といったボードゲームで人間のプロに勝利したというニュースは衝撃的でしたが、ゲームの人気自体にはほとんど影響を与えていないようです。AIの登場以前も、乗馬や狩猟といった余暇が効率の良い技術が発明された後も親しまれて来ました。
僕の趣味のスピードキューブではロボットが1秒にも満たない時間で完成させられるようになりましたが、ロボットに勝てなくても興味が削がれる気はしません。
これまでの時代でも純粋な気持ちで物事に取り組んでいない人は次第に興味を失って離れていくことがありました。AI時代ではより純粋に好奇心を持って物事を追求する態度が求められるのではないでしょうか。
物事を面白くするもの
AIが人間を超えても物事を楽しめる理由は他にもあります。どんな物事もできないかもしれないからこそ楽しむことができます。
発達したAIを利用すれば人間の知的活動は飛躍的に簡単になるでしょう。現在親しまれているボードゲームも必勝法が見つかるかもしれません。しかし、初めから出来るとわかっていることが面白いと感じられるでしょうか。できないことに挑戦するから面白いのです。
最近はスポーツ界でフィクションかと思うような活躍を見せる選手が現れ始めました。WBSSでの井上尚弥の一撃KOはあまりにも衝撃的でした。
まだ頭を抱えている。
例えば、今夜の現実を漫画にしたら笑劇になるだろう。
しかし、漫画のような現実は衝撃となる。
あの鳥肌が立つ瞬間をそのまま伝えられる作家は何人いるのか。
厳しい課題を突きつけられた気がする。
ボクシング観も変わったが漫画観も変わってしまうほどの一撃だった。— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) October 7, 2018
これに対して人気ボクシング漫画「はじめの一歩」作者の森川ジョージさんも以上のようにツイッターでコメントしています。
ツイートの通り、漫画で同じことが起きても同じ衝撃は生まれなかったでしょう。事実は小説より奇なりとは言いますが、できないかもしれないことを達成するからこそ驚きや感動が感じられます。
ラッセル幸福論には結局家に帰ってくるのに旅行に出かけるのだから結果だけでなく過程にも価値があると書かれています。(書評)AIで簡単に結果を求めることはこれからどんどん容易になっていくでしょうが、それでも過程として自ら出来るかどうかわからない問題に取り組むことで人間は尽きることのない好奇心を満たすことができるのではないでしょうか。